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看護師が仕事を離れる理由として「記録が多すぎて帰れない」「家に帰ってからも書き物が続く」という声をよく耳にします。やりがいはある、利用者様のことは好き、でも記録と残業が積み重なって限界になっていく——そういう方を、これ以上増やしたくない。あまてらすでは「50分で看護、10分で記録」という方針を掲げ、記録負担を仕組みで解決することに取り組んでいます。
「50分で看護、10分で記録」という方針を掲げた理由
訪問看護は1回の訪問が60分です。その60分をどう使うかが、スタッフにとっても利用者様にとっても大切になってきます。
以前、代表が「50分で看護、10分で記録の方針を取っています。記録による残業を減らしたいという思いで始めました」とXで発信したところ、1,500を超えるいいねをいただきました。それだけ多くの看護師さんが、記録の負担に悩んでいる。あらためてこの問題の根深さを感じました。
記録は、利用者様へのケアの質を守るために欠かせない仕事です。でも、記録に使う時間がどんどん膨らんでいけば、本来集中すべき「看護そのもの」の質に影響が出てしまう。「記録が終わらないから残業」「持ち帰りで深夜まで書いている」という状況は、個人の努力で乗り越えるものではないと思っています。仕組みで解決する。その発想が出発点です。
一つひとつの記録にかかる時間は、数分かもしれません。でも1日10件の訪問があれば、その積み重ねは大きな時間になる。「少しでも仕組みで解決していきたい」という姿勢を持ち続けることが、長く働き続けられる職場につながると信じています。

「考えることを減らす」と、動きやすくなる
記録の効率化で意識していることのひとつが、「考えることを減らす仕組みづくり」です。
たとえば、訪問がキャンセルになったとき。突然できた空き時間を「どう使うか」、その都度スタッフが自分で考えなければならない状況が続いていました。一見些細なことのようですが、「今日は何をすべきか」を毎回ゼロから判断するのは、意外と消耗することでもあります。
そこで、空き時間の長さによって「この時間帯はこの動きをする」という基準をあらかじめ設定する方式を取り入れました。自由に任せていた部分を少しだけ具体化する。それだけで「迷う時間」が減り、実際の動きやすさが大きく変わりました。「考えることを減らすと、実行力が上がる」——これは記録の効率化にも同じことが言えます。何をどの順番で入力するか、どんな表現を使うかが標準化されていれば、記録にかかる時間はそれだけ短くなっていく。
「自由にやっていい」と言われた方が負担になる場面は、仕事の中に意外と多い。良かれと思って任せても、標準化された方が楽になるものがある。その見極めをしながら、仕組みをもっと整えていきたいと思っています。
記録の方法についても同じです。「どのタイミングで入力するか」「どんな言葉で書くか」のベースラインをそろえることで、新しく入ったスタッフも早期に記録に慣れることができます。ベテランが暗黙知として持っているノウハウを可視化して、仕組みに落とし込んでいく。それが組織全体の底上げにつながります。
「言葉より見せた方が早い」——視覚化で迷いをなくす
記録のルールや業務フローを伝えるとき、私たちが意識しているのが「ビジュアルで見せる」ことです。
人に何かを伝えるとき、言葉だけより「見せた方が早い」ことが多い。今はAIを活用することで、一瞬で分かりやすいスライドが作れる時代です。記録の分類ルールブックや業務フローのまとめも、テキストで渡すより図や表で視覚化した方がスタッフに届きやすい。「どうすればいいか」を直感的に理解できる資料があれば、迷いが減ります。
こういう視覚的な道具をどんどん活用していくことが、現場の負担を減らすことに直結すると思っています。スタッフが「何をすべきか迷う時間」を減らすための投資は、惜しまない。その積み重ねが、全体のスピードを底上げしていきます。
移動時間という「余白」を、大切にしたい
訪問看護の働き方の中で、スタッフからよく聞く声があります。「訪問間の移動時間が好き」というものです。
病棟では次の患者様対応が待っていて、ひと息つく間もなく動き続けることが多い。でも訪問看護の移動時間は、次の利用者様のことを静かに考えられる時間です。「一人でホッとできる時間で、次の利用者様のことを考える大事な時間なんです」とスタッフが話してくれたとき、この”余白”の価値を改めて感じました。
移動時間が、心を整えるひとときになっている。効率化を追いかけるだけでなく、こういう「間」を守ることも大切にしたいと思っています。記録を訪問先でタブレット入力して完結させる仕組みも、この余白を守るためのものです。事業所に戻ってから記録を書くとなれば、移動時間の持つ意味が変わってしまう。
病棟での勤務と訪問看護の大きな違いのひとつが、この「一人の時間」があるかどうかだと思っています。チームで動くことの良さはもちろんありますが、訪問看護では担当する利用者様のことを自分のペースで考えられる。その自律性が、仕事への向き合い方をじわじわと変えていく、とスタッフの話を聞くたびに感じます。
直行直帰ができて、訪問先で記録が完結して、定時に帰れる。そういう働き方の中に、心のゆとりが生まれる。そのゆとりが、次の訪問での丁寧な関わりにつながっていくと思っています。

「残業ゼロ」はゴールじゃなく、スタート地点
「定時に帰れる」ことの意味は、単に「残業がない」ということではないと思っています。
帰宅後に十分な休息が取れれば、翌日の訪問に集中できます。家族との時間が確保されれば、精神的なゆとりが生まれる。仕事とプライベートのバランスが取れている人ほど、仕事の質も高い——これが私たちの実感です。スタッフの生活が豊かになることと、利用者様へのケアの質が上がることは、矛盾しない。むしろ連動しています。
だから「残業ゼロ」はゴールではなく、スタート地点です。残業がなくなった先に、自分の時間を使って学べること、家族と過ごせること、好きなことを続けられることがある。「どうせ残業するんでしょ」という諦めを、あまてらすでは持ってほしくない。そのために仕組みを整え続けていくのが、私たちの役割のひとつだと思っています。
看護師さんが「仕事を好き」でいられる状態を、できるだけ長く続けてほしい。そのためには、仕事の中の「無駄な消耗」を減らすことが大切だと思っています。残業も、迷いも、「どうすればいいか分からない」という宙ぶらりんな感覚も、仕組みで取り除けるものは取り除いていく。そうして生まれた余白の中に、看護師としての本来の充実感が戻ってくると信じています。
今の仕組みが完成形だとは思っていません。まだ改善できることはたくさんあります。「こうしたら楽になる」「この手順を変えた方がいい」というスタッフからの声は、いつでも歓迎しています。仕組みは現場の声から育っていく。そう思いながら、これからも少しずつ積み上げていきます。
「記録が終わらなくて毎日残業している」「家に帰ってからも書き物が続いて、休めない」——そんな日々に疲れているなら、ぜひ一度あまてらすを見に来てください。完璧な職場はどこにもありません。でも「もっとよくしよう」という意思を持ち、仕組みで問題を解決しようとしている組織かどうかは、見れば伝わると思っています。50分の看護を丁寧に届けて、10分で記録を終えて、定時に帰る。その積み重ねが、長く働き続けるための基盤になります。




